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症例1:猫の歯肉口内炎

 政岡動物病院勤務獣医師山口による歯の話第四回、実際の症例を一例ずつ見ていこうと思います。

※症例の口の中の写真、手術中の写真が多数出てきます。血液などが苦手な方は、無理をして見ないでください。

 記念すべき第一回目は、猫も飼い主も獣医師も辛い、猫の歯肉口内炎のAちゃんです。

 Aちゃんは手術当時6歳。避妊済みの女の子です。体重は4㎏。ご飯を食べにくそうにする、口臭、口の周りが汚れる、などの理由で来院されました。口の中は典型的な歯肉口内炎で、奥歯(臼歯)の周辺と、口の奥の粘膜が真っ赤でした。

当時、動物用歯科ユニット(抜歯に必要な機器)が無かったので、まずは内科療法からスタートしました。

 内科療法はステロイドという強めの抗炎症剤と、抗菌薬(抗生物質)です。注射と飲み薬の両方を行いました。炎症が収まったため、食欲は戻りましたが、口内炎が治ったわけではありませんでした。

 数か月後、ついにユニットが届いたので、外科手術を決行しました。(写真①:手術前の口の様子)

 Aちゃんは口の奥の方に炎症が集中していたので、まずは犬歯より奥の臼歯を全て抜く『全臼歯抜歯』を行いました。

 現在、歯科手術をする時は、口腔内のレントゲンを撮るのがゴールドスタンダードと言われていますので、レントゲンも撮りました(写真②)。 

 臼歯の歯根の周りの骨(歯槽骨)が溶けている様子がうかがわれました(矢印・点線〇)。

 スケーリング(歯垢・歯石除去)を行ってから、全臼歯抜歯に進みます。

 臼歯を全て抜き、細い糸で歯肉を縫合した様子が写真③(上顎)と写真④(右下顎)の点線〇印の部分です。

 若い猫ちゃんなので抜歯もスムーズでした。年を取るごとに、歯根と歯槽骨がしっかりくっついてくるため、抜歯は困難になる傾向があります。

 手術から数日後、食欲もしっかりある様子でした。術後2週間は柔らかいご飯を食べてもらい、2週間が経過したところで、カリカリご飯に戻してもらいました。(臼歯が全部なくても、問題なくカリカリを食べられます!)(写真⑤)

 手術から約2か月後、体重は術前より増えて4.5㎏になり、毛づやもキレイでした。しかし口内炎がわずかに再発していたので、短期間、飲み薬を処方したところ、おさまってきました。

 現在、手術から1年3ヶ月経ちましたが、口内炎は再発もなく、元気に過ごしてくれています。体重はかなり増えて4.7㎏になり、ぽっちゃりさんです(苦笑)。デンタル系サプリメントを使用してもらっています(写真⑥)。

 口内炎の痛みで食べられなかった猫ちゃんが、手術を経て、ダイエットしないといけないほど美味しくご飯を食べられるようになってくれるのは無上の喜びです。

 猫ちゃんの口の中のこと、ぜひ一度当院にご相談ください。

(2023年4月 山口文 DVM, Ph.D.)

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