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犬の歯周病について

 政岡動物病院勤務獣医師・山口による歯の話第二回です。今回は、診察していて最も多くみられる、犬の歯周病について書こうと思います。とにかくわかりやすく、と院長に言われているので、なるべく嚙み砕いて書きます。歯の話だけに。

 犬の歯周病は、口が臭い、歯が汚い、などに気付いた飼い主さんからよく相談されます。

 歯周病と一言で言っても、軽度のものから重度のものまで色々あります。

写真①軽度歯肉炎・歯石付着

 実は歯周病は、歯肉炎と歯周炎に分けられます。

 写真①では、歯石の付着と、軽度の歯肉炎があります。

 歯肉炎の原因になるのは、歯にべったり付いた細菌のかたまりである歯垢や歯石なので、治療と言っても薬を飲むなどではなく、スケーリングという、ヒトの歯医者さんでチュイーンとやるアレですね、あれが必要です。

 犬猫がおとなしくチュイーンとさせてくれるわけもないので、全身麻酔をかけて、スケーリング(歯垢・歯石除去)とポリッシング(磨き上げ、ツヤ出し)を行います。

 麻酔をかけてまで…と思われるかもしれません。

 しかし、歯肉炎の段階で治療を行わないでいると、必ずと言っていいほど歯周炎に進行してしまいます。

 歯周炎とは、歯肉に加えて歯周組織(歯根が埋まっている歯槽骨、歯根表面のセメント質、歯槽骨と歯の間にある歯根膜など)まで炎症が進んでしまった状態を言います。

 見た目には、歯垢や歯石が付着し、歯ぐきにあたる歯肉が赤くなり、人で言う「歯ぐきが下がる」ような感じです。歯がぐらつくレベルになると、歯の周りの骨はかなり溶けていると判断されます。

写真②重度歯周病

 写真②は重度の歯周病です。歯肉の炎症、歯垢・歯石の付着、歯槽骨が溶けて、歯の根っこが浮いているような状態の歯もあり、写真からはわかりにくいですが、犬歯(矢印)の歯根部分の炎症と歯槽骨の融解が口と鼻を仕切る骨にまで波及し、口腔鼻腔瘻になっています。

 ここまでなると、スケーリングでは治らず、ぐらついている歯は基本的にすべて、抜歯する事になります。

 歯を抜く、抜いた後は縫うという作業は、全身麻酔下でしか行えず、また、麻酔も長時間にわたります。

 また、「歯を抜いたらご飯が食べられないのでは?」と心配される飼い主さんは大変多いです。しかし、重度の歯周炎におかされた歯は、ぐらつくごとに痛みを生じ、口腔鼻腔瘻になると、食事のたびに食べたものや飲んだものが鼻に入るので、汚い鼻汁を飛ばしながらくしゃみをするようになり、慢性鼻炎のもとにもなりますので、百害あって一利無し、です。

 そして、痛い歯を抜いた後は、抜歯と縫合の痛みが落ち着けば、美味しくご飯を食べて元気に過ごせるようになります。

 また、〈歯の話①〉にも書きましたが、歯周病の原因になる細菌は全身に行き渡っていますので、歯周病を放置しておく事は、常に口の中に重度の細菌感染を抱えた状態であると言えて、体に悪いです。

ちなみに、山口調べですが、歯周病の口臭の原因物質は、トイレの悪臭の原因物質とほぼ同じです。

 

 歯肉炎、歯周炎のどちらにも言える事ですが、麻酔をかけてまで処置・手術を行った後の事もとても重要です。

 治療をした時、口の中は最高にキレイな状態です。これをキープする必要があるのです。

 最近はデンタルジェル、犬猫用の歯ブラシ、オーラルスプレー、マウスクリーナー、デンタル系サプリメントなど、デンタルケア用品が充実しています。(人用の製品にはキシリトールが含まれていることが多く、犬には毒性があるので、必ず動物用をご使用ください!)これらをフル活用して、口の中に細菌が増えないようにケアしていきたいところです。これらを愛犬・愛猫にしてあげられるのは、飼い主さんだけです。

 愛犬の口が臭い…思い当たることがあれば、ぜひ一度当院を受診してください。

(2022年12月 山口文 DVM, Ph.D.)

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