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症例:猫の吸収病巣

 政岡動物病院勤務獣医師山口による歯の話第8回。

 今回はタイトルにもあるように猫ちゃんの歯の病気の一つで『吸収病巣』というのをご紹介します。

 けっこう恐ろしい病気です。歯の表面を覆うエナメル質や、歯根の表面にあるセメント質が溶けていき、やがて歯根の内部や、歯の中心部の歯髄まで侵されます。

 細菌やウィルスによるものではないため、薬が効きません。治療法は、抜歯のみです。

 人間にも似たような病気がありますが、とても稀で、研究もあまり進んでいません。分からない事だらけですが、確かな事は一つ。治らない。

 今回の症例の猫ちゃんです。推定4歳の去勢雄のNちゃん。

 あちこちの歯に、欠けたような病変が見られます。歯の表面のツヤツヤしたエナメル質が欠損しているのです(写真②の矢印)。これを吸収病巣と言います。写真に示した所以外にもありました。

吸収病巣は進行してくると痛みが出てくるのが分かっており、また、Nちゃんは歯周病もあるため、歯根が大きく見えている部分は抜歯する事になりました。

 写真③は歯のレントゲン画像です。黄色点線〇の部分は歯の根元部分ですが、よ~く見ると、その横の矢印で示した歯と比べて、虫食いのように黒っぽくなっています。これが吸収病巣の部分です。さらに、2本ある歯根の間が黒く抜けています。本当なら隣の歯のように、歯根の間は骨で埋められているのですが、吸収病巣と歯周病によって、骨が溶かされている状況です。

 この歯は抜歯し、他にも同じような歯を何本か抜いて、最後にポリッシング(研磨剤による磨き上げ)をして終わりました(写真④)。

 この子は残せる歯は残し、デンタルジェルを使用しながら、経過を追っていく予定です。必要に応じて、再度歯科処置を行います。

 歯を抜く話ばかりしていますが、本当は、噛むという動作は、歯を持つ動物にはとても重要なのです。できるだけ歯を抜かなくても良いように、早期発見に努めていただきたいです。

 愛犬・愛猫を守れるのは飼い主さんだけです。是非、少しでも気になることがあれば、早めに動物病院においでください。

(2023年7月 山口文 DVM, Ph.D.)

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