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症例6:乳歯遺残

 政岡動物病院の勤務獣医師山口による歯の話第9回。今回は、けっこうよくある、乳歯遺残についてです。

 犬猫は生後3週間くらいで乳歯が生え始めます。そして、12週齢頃には永久歯に生え代わります。生え『代わる』のです。つまり、永久歯が生えてきてからしばらくの後、乳歯は抜けるのが本来の姿です。しかし稀に、永久歯が生えてからもずっと乳歯が抜けきらずに残っている子がいます。特に小型犬で多く、猫ではほぼ見られません。これを乳歯遺残と言います。

 はっきりした基準はありませんが、7ヶ月齢を超えると、もう自動的に乳歯が抜ける事はないだろうと言われます。

 遺残した乳歯は、永久歯の生え方を悪くしたり、歯と歯の隙間が狭くなって歯垢や歯石が付きやすくなる原因になったりします。そのため、抜歯が推奨されます。

 それでは症例です。1歳の去勢雄のトイプードルのPちゃん。6ヶ月齢頃に去勢を済ませ、その時に乳歯が残っていましたが、様子を見ていて、結局1歳まで抜けなかったので、抜歯する事になりました。

 歯垢・歯石もついているので、スケーリング(歯垢歯石除去)とポリッシング(研磨剤による磨き上げ)もセットでやります。

 写真①②の矢印で示したのは全て、抜けずに残っていた乳歯です。乳歯遺残が最も起こりやすい犬歯の他に、臼歯(奥歯)も3本の遺残がありました。

 この子は残っていた乳歯を全て抜いて、歯をきれいにして終了です。

 乳歯がしっかり歯肉に付いていたので、一部切り取って、縫合しています(写真③④点線丸部分)。このくらいくっついていると、自然に抜けるのは難しかったと思われます。

 乳歯が残っていても、汚れが付いていなかったり、炎症など起こしていなかったり、ぐらついていなければ、そのまま様子を見る事もあります。

 しかし、犬が高齢になってから、それまで放置していた乳歯が歯周病の原因になって、永久歯の方に悪影響を及ぼす事もありますので、やはり早いうちに抜いておく方が無難です。

 また、乳歯の有無に関わらず、歯垢・歯石は除去するべきですので、愛犬の歯の状態が気になった際は、ぜひ当院にご相談ください。

(2023年10月 山口文)

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